「そうじゃ。

「そうじゃ。調べてもらいたいことがある」


 


その日の深夜。


 


奥御殿の寝室で横になっていた濃姫は、外から響いて来る慌ただしい足音に目を覚まし、


 


スッと夜具の上から身を起こすと、睨(ね)め付けるような鋭利な眼差しで、出入口の襖を見つめた。


やがて、響いていた足音が、濃姫の寝室の前で止まると


 


「姫様、失礼致します!」<a href=https://cutismedi.com.hk/expert/10/BOTOX%E5%8E%BB%E7%9A%BA%E9%87%9D style=color:#222222;text-decoration:none;>【BOTOX 去皺針】2-7天消除動態紋 - Cutis</a>


 


襖が大きく開き、三保野が焦り顔で入って来た。


 


「如何したのです───、今川に何か動きでもあったのですか!?」


 


濃姫は察したように訊く。


 


「先程、佐久間盛重様、織田秀敏様より知らせが届き、丸根、鷲津の両砦が今川軍の猛攻を受けている由にございます!」


 


「何と…、織田軍の前線基地が!?」


 


「はい。殿もそれを聞いて飛び起きられ、その足で中広間の方へ向かわれました」


 


「して、殿のご決意は如何に!? ご出陣、それとも籠城か!?」


 


「さすがに、私もそこまでは……」


 


「構わぬ。私が直接行って伺って参る」


 


濃姫はそう言って床の上に立ち上がると、手早く夜着の帯を解き始めた。


 


「三保野、私の着替えをここへ」


 


「そんな…、姫様なりませぬ!安静にしていなければ!」


 


「殿の一大事なのじゃぞ!?悠長に寝ていられる訳がなかろう」


 


「し、しかし──」


 


「ならば良い。そなたが持って来ぬのならば、私がこのまま取りに参る!」


 


既に濃姫は、帯を床の上に解き捨て、夜着の前をはだけさせた状態である。


 


放っておいたら、本当にあられもない姿で、衣装部屋まで駆けて行きそうな主の様子を見て、


 


三保野は「あぁ…もうっ」と自らの太股をひと叩きすると、やけになったように姫の着替えを取りに行った。


 


程なく、三保野が運んで来た綸子の小袖に着替えると


 


「姫様、決してご廊下を走ってはなりませぬぞ。躓(つまず)きでもしたら事にございますから」


 


「懸念無用じゃ。 ──さ、参るぞ」


 


濃姫は三保野と共に部屋を出て、慎重な足取りで表御殿へ向かった。


 


 


やがて中広間の手前まで進み来ると


 


 


ポォーン! ポンッ、…ポォーン!


 


 


襖の開け放たれた広間の中から、鼕々(とうとう)と打ち鳴らされる鼓(つづみ)の音が聴こえて来た。


 


この様な時にいったい何事か…?


 


姫は怪訝そうに眉を寄せながら、そっと広間の中を覗いてみた。


 


すると、数名の家臣たちが端々に控える広間の中央で、小姓が打つ鼓の音に合わせて、


 


白い着流し姿の信長が、利き手に持った扇をひらめかせながら悠然と舞っていた。


『 人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。ひとたび生を得て(享け)、滅せぬ者のあるべきか── 』


 


( 人間の一生は50年に過ぎない。天上世界の時の流れに比べたら夢や幻のようなもの。生あるものは全て滅びてしまうのだ )


 


 


それは信長が日頃から好んで舞っている、幸若舞の「敦盛(あつもり)」のひとさしであった。


 


眉一つ動かぬ、実に真剣な表情で舞う信長の姿を見た三保野は


 


「かような折に、敦盛の一節を謡われるとは…。きっと殿は死を覚悟しておられるのでしょうね」


 


と、切なげに呟いた。


 


しかし濃姫はそうは思わなかった。


 


義元が出陣したと知らせに来てくれた時、既に信長は死を覚悟していた。


 


『 相手は強敵今川義元じゃ。誰であろうとも一度は死を覚悟するというもの 』