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「あれ。何だか眠たそうですねェ。もしかして、眠れなかったんですか?」
「うーん、眠れなかった…のかな。多分、そうです」
曖昧な返答に沖田は不思議そうな顔をする。朱古力瘤手術 では、と桜花は頭を下げて洗濯を干しに向かった。
「気になりますね…」
沖田は何やら考え込んでいた。
「まあ、いいか。どうせ墨を買いに行くだけですし!」
土方の使いで墨を買いに行くところだったが、自己簡潔をすると、桜花の跡を追う。
「桜花さん。宜しければ…それ、干すの手伝いますよ」
沖田はそう言うと、半ば強引に洗濯物を自分の手に納め、歩き出した。
「あ…。沖田先生、待って下さい」
桜花はその後を追う。
物干し竿の前に着くと、沖田は懐から出した紐で襷掛けをし、張り切って洗濯物を干し始めた。
その横顔は随分生き生きとしている。
「沖田先生は洗濯がお好きなんですか」
桜花もその横に並び、皺を伸ばしながら干していった。
「いえね、好きという訳では無いんです。どちらかと言えば、得意…ですかね。よく江戸に居た頃やっていましたから」
そう言う沖田の横顔は照れ臭そうである。試衛館時代に内弟子の仕事として、家事全般は一通り行っていたのだった。
「ほら、私は背丈が有りますから。適材適所というヤツです」
桜花は感心したように頷く。
「そう言えば、試衛館でしたっけ。新撰組の皆さんは全員そこからのお付き合いなんですか」
「いえ。局長の近藤さんが道場主で、副長の土方さん、「ああ見えて土方さんなんかは炊事と畑仕事が上手くてね。斎藤君は魚釣り、原田さんと永倉さんは薪割りと風呂焚き、平助君は買い物上手です」
言われてみると確かに個々の性格上あっている気もする。
「ああ、でもね。その代わり、土方さんは飯にはうるさいですよ。斎藤君は魚釣りの途中で寝てしまってよく竿を川に流してきますし」
ご飯にうるさい土方副長は容易に想像つくが、居眠りをして竿を川に流す斎藤が全く想像出来ずに桜花は目を白黒させた。
「原田さんと永倉さんは焚きすぎてただの熱湯ですね。それはもう熱くて入れやしません。平助君はよく丸め込まれて余計な物まで買ってきますよ」
沖田は言い終わると可笑しそうに笑った。桜花は笑いをこらえる。
「近藤局長は?」
「あの人は応援隊長ですから。近藤先生に頑張れと言われるだけで、誰もが張り切る」
「成る程」
皆の様子が想像出来、桜花は我慢出来ずに笑った。
「あっ、話が反れてしまいましたね。さて、貴方の話を聞かせて下さい。何故、寝られなかったのですか?」
沖田にそう促され、言うべきか否か迷うが折角なので、ある質問をすることに決める。
「大したことでは無いんですよ。沖田先生、馬鹿馬鹿しいことですが一つお尋ねしても?」
洗濯物が風に吹かれ、ゆらゆらと揺れていた。
「ええ。どうぞ」
「その……ですね。先生は、幽霊なるものを信じて居られますか?」
桜花の問いに沖田は首を傾げた。
あの夢のような出来事を幽霊のせいではないかと桜花は仮定していた。